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ベンチャー企業の監査役の役割を考えてみる - ミライ経済Lab.株式会社‐企業改革に関するお悩みをサポート

コラム

ベンチャー企業の監査役の役割を考えてみる

カテゴリ: コラム 作成日:2021年03月31日(水)

こんにちは。ミライ経済Lab.株式会社 代表の神田千鶴です。

 

先月は、「ベンチャーの監査役を務めている私が

欲しいと思う情報がなかなか手に入らない」と思っていることをお伝えしました。

そして、文句を言ってないで、自分なりに整理して逆に発信してみようと決めましたので、

今月から暫く、どうぞお付き合いください!

 

 

今回は、

ベンチャー企業では、監査役という役割をどう位置付けているのかと、

どう位置付けるべきと私が思っているのかを整理したいと思います。

 

 

 

冒頭から言葉を選ばず表現しますが、

そもそも監査役というのは、法で設置が求められているから”やむなく“置いている、

という程度だった時代がずっと続いていました。

つまりは、何をするのか、どんな役割があるのかはどうでもよくて、とにかく、監査役〇〇氏

が当社にはいます、と言えればいい、という会社の意思表示をその人選から私は感じていました。

 

それは、ベンチャーに限らず上場企業ですらその『会社の意思表示』を感じていたのですが、

ベンチャーはことさら報酬額にもその『意思表示』をひしひしと感じました。

 

私が独立してから常勤監査役としてのオファーをたくさん頂きましたが、報酬額は、

「それ、名前だけ貸してくださいというレベルですよね」という金額であることが多かったのです。

上場企業に比べて資金的に余裕がないから、という理由も大きいとは思いますが、

意義の感じられない役割の人にかけるコストは最小限に、という理由も大きいというのが私の印象です。

 

ベンチャー企業で監査役の意義が感じられないというのは、

もちろん、監査役の役割を知らないということではありません。

ここも言葉を選ばずに表現しますが、

攻めに攻めて成長真っ只中の組織で、ガバナンスの不備や事業にダメ出しばかりする人がいても

成長の足かせになるだけ、だから何も言わずに存在だけしておいてください、

ということなんだろう、というのが私の理解です。

 

そして、その考えについて、私は半分納得しています。

 

監査役の役割とは、経営を監督することなので、

上場企業であれば、発見したガバナンスの不備をバンバン指摘し、

改善せよ、と伝達さえすれば、

然るべき責任者の指揮で改善が進んでいくはずです。

でも、ベンチャー企業ではそうはいきません。

 

それは、上場企業は会社としての体制が整っているのに対して、

ベンチャー企業は会社としての体制自体がまだ整っていないからです。

そして、ベンチャー企業に所属するメンバーは、体制自体が整っていないということについて

自覚があるわけです。

それを改めて、「ここができていない、あそこもできていない、それから、、、」と指摘だけされても

「はい、すみません。その通りです。でも成長しないといけないので日々の業務で一杯です」

と言わないまでも、心の中では思うでしょう、間違いなく。

 

つまり、

出来上がった企業を前提に監査役が「こうあるべき」と遠いゴールを見せてもほぼ意味がないのです。

それよりも、

多数の不備の中で優先すべきなのはどこか、

なぜそれを優先すべきなのか、

それをどう実行していくか、

経営陣やメンバーが青写真を描けるようにサポートすることが必要だと思っています。

 

 

一方で、私が半分納得していないのは、

成長が最優先だからといって、守り領域をおろそかにしたまま成長を続けると、

将来、不正や重大な事故が容易に発生する組織になってしまうというリスクの大きさに

目を向けられていないもどかしさです。

清く正しく、守りも重視した経営は、あとから仕組化することでできると思っているのかもしれません。

それこそ、IPOの段階で求められる様々な要件を形式的にクリアすることで、

体制を整えるつもりなのかもしれません。

ですが、それでは手遅れだと私は思っています。

 

なぜなら、ベンチャー企業のガバナンスで最も重要なのは、仕組よりも、企業文化の醸成だからです。

清く正しく、守りも重視した経営の重要性を早い段階から企業内に醸成していかなければ、

仕組みは後から作れても、企業文化は1秒1秒の積み重ねであり、

残念ながらお金で買えるものでも時間をかけて変えることができるものでもありません。

 

ニュースに取り上げられるような上場企業の不祥事も

「これぐらいはいいよね、とにかく今は前へ進もう」その小さな積み重ねが

時間と共に歪んでいった結果であり、一度歪んでしまうと、小手先の改善策を講じても

また忘れた頃に不祥事は発生する、というのが私の見立てです。

 

企業文化は、木で例えると根っこ部分なので、枝葉の枯れた部分だけを取り除いても、

根っこが腐っているとどうしようもないということです。

ベンチャー企業でも、枝葉が勢いよく伸びている部分だけを見ていたら、根っこが腐ってた、

ということになれば残念極まりないですよね。

根っこが腐っては、もうどうにも立て直しができないのですから。

木が倒れるまでは騙し騙しやっていけるとは思いますが。

 

そういう将来リスクを監査役が経営陣に説いていくのがとても重要なのでは、と思っています。

 

 

 

ということで、今回のお題についてまとめると、

ベンチャー企業の監査役の役割とは、

① 経営陣と所属メンバーに守り領域の重要性を啓蒙すること

② 課題の指摘だけでなく、課題解消の道筋まで提案するという体制構築の一翼を担うこと

 

ではないかと私は思っていますが、皆さんはどうお考えでしょうか。

 

 

ベンチャー企業は、組織として未熟なこと、人員に余剰がないこと、

これから世の中に浸透していくような、今までにない新しい事業を手掛けていたり、

新しい仕組を採用していたり、動きが早く変化も激しいです。

 

だから

上述の役割を監査役が担うには、相応の知識とセンスと判断力と胆力が要ります。

そして、そんな監査役を迎え入れるベンチャー企業は、

それなりの報酬を支払ってでも適任者を探すべきだと思っています。

 

 

ちなみに、いまの私の場合は、

元々、経営者が守りの重要性を理解していて、それなりの報酬で適任者を探していたということもあり、

2つの役割のうち②に全力集中しています。

 

試行錯誤の連続で、常に「これでいいのか」と自問しているので、

時が経てば考えも変化するかもしれませんが、

今のところは、この2つが監査役の役割だと確信しています。

 

 

それを前提にまた

次月以降も、どうぞお付き合いください!

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